シルミチュー(沖縄県・うるま市)

沖縄本島から、琉球開闢の聖地として名高い浜比嘉島のシルミチューへ。今日はコミュニティバスに揺られて伺います。海中道路を抜け、いくつもの島を渡っていくこの道のりそのものが、すでに一つの巡礼のように思えてくる。琉球の神々が舞い降りたと伝わる島で、どんな空気に出会えるのか。

「JAおきなわ与那城支店前」バス停からコミュニティバスに乗り込み、いよいよ出発。目指すはうるま市の浜比嘉島に鎮座するシルミチューだ。ここは琉球開びゃくの祖神、女神アマミチュー(アマミキヨ)と男神シルミチュー(シネリキヨ)が海の彼方の理想郷ニライカナイより舞い降り、暮らしたと伝わる聖地。島全体が広大なパワースポットとも言われる場所だけに、車窓の景色にも自然と気持ちが引き締まる。

バスは沖縄本島と離島群を結ぶ海中道路へと差し掛かった。この海中道路、実はもともと橋があったわけではなく、干潮時に人々が浅瀬を歩いて渡っていたことがその名の由来なのだという。全長約4.7キロにわたって青い海の中を突き抜けるように走る道は、まさに絶景のドライブルート。宮城島を走り抜けると、右手には浜比嘉島へと続く浜比嘉大橋の姿も見えてきて、いよいよ目的地が近づいてきたことを実感する。

浜比嘉大橋を渡り、いよいよ浜比嘉島へと入っていく。橋を渡りきった先にはT字路の突き当りがあり、ここへ勢いよく突っ込んでしまう事故が少なくないと聞く。もしご自身の車で訪れる際は、橋を渡りきった先の急な突き当りにくれぐれもご注意いただきたい。浜と比嘉、二つの集落からなるこの島は、赤瓦の屋根や石垣が残る古き良き沖縄の風景が今も色濃く息づいている。

比嘉漁港前」バス停でバスを降り、ここからは自分の足でシルミチューを目指す。潮の香りを感じながら、集落の中をゆっくりと歩いていく道のりも、この参拝行の楽しみのひとつだ。

歩いていると「シルミチュー200m」と記された看板を発見。ゴールが近づいてきたことが分かり、自然と足取りも軽くなる。

看板に導かれるまま進むと、どっしりとした石造りの鳥居が姿を現した。ここから先がいよいよ神域。背筋がぴんと伸びるような、凛とした空気が漂う。

鳥居のそばには、うるま市の指定有形民俗文化財として設置された説明板があった。それによると、森の中に佇むこの洞穴こそが、琉球開びゃくの祖神アマミチューとシルミチューが暮らし、子をもうけたと伝わる場所なのだという。洞穴内には鍾乳石の陰石が祀られており、これが子宝を授かる霊石として古くから崇拝されてきたのだそうだ。毎年旧正月には、地域の自治会とノロ(祝女)が中心となって年頭拝み(ニントゥウガン)が行われ、海浜から拾った小石を洞穴内の壺に納めて、豊穣や無病息災、子孫繁栄を祈願するという。説明を読んでいるだけで、この場所に積み重ねられてきた信仰の深さがひしひしと伝わってきた。

説明板を読み終え、いよいよ石段へと足をかける。うっそうと茂る木々に囲まれた108段もの石段を、一歩一歩踏みしめながら上っていく。

息を切らしながら上りきると、目の前にもうひとつの鳥居が現れた。この先に、アマミチューとシルミチューが暮らしたと伝わる洞穴が待っている。張り詰めた空気の中、深呼吸をひとつしてから足を踏み入れた。

無事に参拝を終え、拝所の脇で少し休憩をとることに。それにしても、これだけの石段を上った先にある拝所だけに、高齢のノロの方々にとってはなかなかの体力を要する道のりなのではないかと、ふと思いを馳せてしまった。それでも千年以上受け継がれてきたであろうこの信仰が、今も途切れることなく地域の人々によって大切に守られているのだと思うと、頭の下がる思いだった。

石段を下り、再びバス停近くの海辺まで戻ってきた。穏やかな浜比嘉島の海を眺めながら、先ほどまでの厳かな空気とはまた違う、のどかなひとときに心が和んでいく。

コミュニティバスに揺られ、海中道路の絶景を抜けてたどり着いたシルミチューは、琉球開びゃくの神話が今も息づく、静かで力強い聖地だった。108段の石段を上りきった先で感じた張り詰めた空気と、地域の人々が絶やすことなく守り続けてきた信仰の深さに、心を打たれる参拝となった。浜比嘉島を訪れる際は、ぜひこの神話の島の空気を、その足で確かめに来てみてほしい。

シルミチュー
・沖縄県うるま市勝連比嘉
・平安座総合開発「比嘉漁港前」バス停から徒歩15分。

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