黄泉比良坂(島根県・松江市)

日本の神話『古事記』において、生者の世界(現世)と死者の世界(黄泉の国)を隔てる境界として描出される「黄泉比良坂(よもつひらさか)」。伝承の域にとどまらず島根県松江市に実在するゆかりの地を目指し、古代ロマンの息吹と不思議な空気感を肌で感じる歴史探訪へと歩みを進めます。

出雲国の格式高い古社・揖屋神社から国道191号線を東へ700mほど進み、山陰本線の高架をくぐった先にある踏切へと到着しました。ここから南へと400mほど進む道順となっており、レールを渡って神話の舞台へと近づくにつれ、日常から徐々に足を踏み入れていく感覚が高まります。

踏切を抜けて進むと、ついに「黄泉の国への入口」と記された案内が現れ、ここが異界との境界点であることを教えてくれます。

案内に導かれるように先へと進むと、早くも上り坂が始まりました。「比良坂」の名の通り、すでにこの場所自体が緩やかな坂構造を形成していることが実感できます。

坂道の脇には美しいアジサイが咲き誇り、静寂な雰囲気に彩りを添えています。

「黄泉比良坂・伊賦夜坂」と書かれた案内板が設置されており、この地が北川景子主演の映画『瞬 またたき』のロケ地として使用された旨が記載されています。

神々の略系図が掲げ出出されており、伊邪那岐神(イザナギノミコト)を起点とする緻密な神々のつながりを視覚的に確認できます。

周囲の緑が深まるにつれ、道幅が徐々に細くなっていく独特の小道を進んでいきます。

道沿いには「オハツモモの木」が植えられています。

道中には結界を意味する「縄鳥居」が飾られており、神聖な地への到達を告げています。

敷地内の石碑には、イザナギ命が追っ手から逃れる際に桃の実を投げつけて難を逃れたという古事記の有名なエピソードが刻まれています。

ここにはポストが設置されており、亡くなった大切な人や黄泉の国へ宛てた手紙を出せる特別なスポットとなっています。

「塞の神へ90mこの道伊賦夜坂」の看板が立ち、デスマスクの積尸気冥界波を受けた紫龍はこの辺に飛ばされたのかと微妙にテンションが上がります。

いよいよ目的地周辺の、木々に囲まれた非常に細い道を進んでいきます。

周囲の厳かな空気に包まれるうち、空間の持つ不思議な力に気圧されそうになったため、静かにご祈祷を捧げて参拝を締め括ることにしました。

目的を果たし、元来た道を戻ります。往路で上ってきた坂道も下りは足取りも軽やかで、異空間から現世へと戻っていくような感覚を覚えます。

黄泉比良坂は、古代神話のロマンと静寂な自然が見事に調和した、唯一無二の雰囲気をまとった歴史スポットでした。神話の記述に想いを馳せながら、現世と異界の境界線とされる場所の空気感を、ぜひ現地で確かめてみてください。

黄泉比良坂
・島根県松江市東出雲町揖屋2407
・揖屋駅から徒歩30分。

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