三島梅花藻の里(静岡県)

富士山からの豊かな湧水に恵まれた三島の街。その清らかな水の中でしか生きられない、とても小さくて可憐な花があると聞いた。その名も「三島梅花藻(ミシマバイカモ)」。保護と育成のために整備された場所があるというので、これは行ってみるしかない。透き通った水面にどんな花が揺れているのか、期待に胸を膨らませながら現地へと向かった。
まず道路側からそっと中をのぞいてみると、想像していた以上にきちんと手入れが行き届いている様子が伝わってきた。区画整然とした様子はまるで畑のようで、ここが植物を大切に育てている場所なのだと一目で分かる。三島梅花藻は水の汚染に非常に敏感で、冷たくきれいな湧水でしか育たない、いわば水質のバロメーターとも言える植物。昭和30年代の湧水減少や水質悪化によって一時は市内の川から姿を消してしまったというから、この整った環境こそが復活への努力の証なのだろう。

入口には「三島ゆうすい会」や「遊水匠の会」といった地元の団体による案内板が設置されていた。三島梅花藻は昭和5年に楽寿園の小浜池で発見され、梅の花に似た白い可憐な花を咲かせることからその名が付けられたのだそう。「三島の宝物」というフレーズがなんとも誇らしげで、地域の人々がどれほど大切にこの植物を守り育ててきたかが伝わってくる。1995年には湧水池を借りて増殖基地として整備されたそうで、まさに市民の手によって受け継がれてきた宝物なのだと実感した。

続いて目に入ったのが「三島 緑と水の杜・三島梅花藻の里」と題された案内図。園内の様子が一目で分かるようになっており、どうやら道路側から中に入っていくルートになっているようだ。地図を頼りに、いよいよ本格的に敷地の中へと足を踏み入れる。ここで増やされた三島梅花藻は、市内を流れる源兵衛川などにも移植され、かつての原風景の再生にも役立てられているのだという。

案内図を頼りに進んでいくと、どうやら右側にある和菓子屋さんの敷地を通り抜けて奥へと向かうルートになっているようだ。お店の方にご迷惑をおかけしないよう、会釈をしながら足早に通らせてもらう。せっかくのご縁なので、帰りにはぜひ一つ和菓子でも買って帰ろうと心に決めつつ、奥の湧水スポットを目指した。

奥まで進むと、パイプから水面に向かってシャワーのように水が流され続けている様子が見えた。絶えず水を動かし続けることで水中に酸素を取り込み、三島梅花藻が好む清らかな環境を保っているのかもしれない。静かな水音とともに、水を大切に守り続ける工夫が随所に感じられる光景だった。

近づいてよく見てみると、水中には小さな白い花がいくつも咲いていた。想像していたよりもずっと繊細で、そっと水に揺れる姿には思わず時間を忘れて見入ってしまう。

流れの中に広がる緑色の部分も、実はすべて梅花藻の葉。糸状に細く分かれた葉が水の流れに沿ってなびく様子は、まさに水中に咲く緑の絨毯のようで、清流ならではの美しい景観を作り出していた。

改めて花に目を凝らすと、その小ささに驚かされる。けれど小さいからこそ、水面でひっそりと咲くその姿には凛とした美しさが宿っていて、思わず「きれい」と声が漏れてしまった。
湧水の街・三島だからこそ出会える、小さくも凛とした三島梅花藻の姿。地域の人々が長年守り育ててきたこの場所には、清らかな水と共に生きる植物の力強さと、それを支える人々の想いがしっかりと息づいていた。三島を訪れた際はぜひ、この小さな宝物にそっと会いに行ってみてほしい。
三島梅花藻の里
・静岡県三島市南本町7













