金刀比羅宮(香川県・仲多度郡 琴平町)

2026年10月17日

まだ夜の気配を残す大安寺駅ホーム。人影もまばらな構内には独特の静けさが漂っています。これから向かうのは香川県琴平町の金刀比羅宮。全国的にも知られる名社ですが、その魅力の一つは早朝の参拝にあります。観光客で賑わう時間帯とは異なり、空気が澄み、山の神域らしい落ち着きを感じられる時間です。まだ薄暗いホームに列車の灯りが近づくと、いよいよ旅の始まりです。

列車を乗り継いで四国へ。車窓の景色がゆっくりと明るくなり、やがて地平線の彼方から朝日が姿を現します。旅先へ向かう途中に迎える日の出は、それだけで特別なものです。参拝を目的に移動していると、目的地に到着する前から気持ちが整ってくるもの。朝焼けに染まる景色を眺めながら、今日一日の無事と良い参拝を願います。

琴平駅に到着すると、門前町らしい落ち着いた空気が迎えてくれます。新町鳥居をくぐり、かつて多くの参詣者が歩いた金毘羅街道を進みます。道沿いには土産物店や飲食店が並び、江戸時代から続く門前町の面影を感じることができます。これから始まる石段参拝への期待も高まってきました。

いよいよ参拝の本番です。御本宮まで785段。数字だけを見るとなかなかの道のりですが、参道には見どころが多く、意外と楽しみながら進むことができます。金刀比羅宮の石段は単なる移動手段ではなく、参拝そのものの一部ともいえる存在です。無理をせず、自分のペースで登っていきましょう。

 

なかなかの圧

 

10分ほどのぼったところで「ここで二九四段目、御本宮まであと四九一段」の表示。しかし、この段数表示が金刀比羅宮参拝の面白いところ。現在地が分かることで達成感も積み重なっていきます。あと491段という数字を見ると少し圧倒されそうですが、まだ余裕もあります。ここで思わず笑ってしまうのも、こんぴら参りの醍醐味かもしれません。

大門へ到着。大門は金刀比羅宮の総門であり、この先が本格的な神域となります。ここまでの賑やかな門前町とは雰囲気が変わり、山内の落ち着いた空気が感じられるようになります。ここまで来ると御本宮も現実的な距離に感じられてきます。

石段が続くと思いきや、大門の先には比較的歩きやすい平坦な参道があります。登り続けてきた身にはちょっとしたご褒美のような区間。木々に囲まれた神域をゆっくり歩きながら呼吸を整えます。早朝ということもあり、人通りは少なく、静かな散策を楽しむことができました。

参道沿いには美しく色づいた木々。朝日に照らされた黄金色の紅葉は実に見事で、足を止めて見上げたくなります。どうしても石段に意識が向きがちな金刀比羅宮ですが、道中の自然も大きな魅力の一つ。季節ごとに違う表情を見せてくれるため、何度訪れても新たな発見があります。

金刀比羅宮では神馬を見ることができます。神社で神馬像を見る機会は多いものの、実際に生きた神馬がいる神社は決して多くありません。静かにたたずむその姿には独特の神聖さがあります。ここでしばし足を止める参拝者も多く、金刀比羅宮ならではの見どころの一つです。

なかなかの圧

ついにゴールが見えてきました。残り133段という数字は、ここまで登ってきた参拝者にとってはむしろ希望の数字。励ましの言葉も相まって、自然と足取りが軽くなります。石段は確かに大変ですが、その分だけ御本宮へ近づく実感が得られるのです。

 

なかなかの圧

 

ついに御本宮へ到着です。金刀比羅宮の御本宮は石段785段目に鎮座し、古くから多くの参拝者の信仰を集めてきました。象頭山の中腹という立地もあり、ここまで登り切った達成感は格別です。まずは無事に到着できたことへ感謝したいところです。

御本宮周辺からは讃岐平野を一望できます。長い石段を登った人だけが見られる景色はまさにご褒美。遠くまで広がる平野と街並みが、登ってきた苦労を忘れさせてくれます。参拝後にゆっくり景色を眺める時間も大切にしたいですね。

丸みを帯びた美しい山容が特徴の飯野山。その姿から讃岐富士とも呼ばれており、御本宮付近から望む代表的な景観として知られています。香川県らしい風景の一つであり、思わず見入ってしまいます。

御本宮で終わりではありません。ここからさらに583段進んだ先には奥社・厳魂神社が鎮座し、合計1,368段になります。今回は時間の都合で見送りましたが、いつか奥社まで踏破してみたいものです。それもまた次回参拝の楽しみとして残しておきましょう。

景色を楽しみ、呼吸を整えたところで参拝。ここまでの道のりがあるからこそ、手を合わせる時間も特別に感じられます。早朝という静かな環境も相まって、とても穏やかな時間を過ごすことができました。

授与所で目を引いたのが狗みくじ。金刀比羅宮では江戸時代に主人に代わって参拝したと伝わる「こんぴら狗」の逸話が有名です。その歴史にちなんだ授与品は、こんぴらさんらしさを感じられるものばかり。

こちらは狗守り。素朴で愛らしい姿が印象的で、多くの参拝者が手に取っていました。旅の安全や良縁、さまざまな願いを込めて授与を受けるのも参拝の楽しみの一つです。

というわけで、我が家にも一体お迎えしました。参拝の記念であり、この日の思い出そのものでもあります。旅先で授かった御守りは、帰宅後もその時の景色や空気を思い出させてくれる存在です。

静かな早朝から始まった今回のこんぴら参り。785段という数字に身構えていても、門前町の賑わい、神域の静寂、神馬との出会い、そして御本宮からの絶景と、見どころにあふれた参拝路のおかげで最後まで楽しく歩くことができました。金刀比羅宮は単なる観光地ではなく、一段一段を積み重ねながら神前へ向かう「参拝の体験」そのものに価値がある場所です。早朝の澄んだ空気の中で歩くこんぴら参りは、特におすすめしたい時間帯。次に訪れる時は、1,368段の先にある奥社まで足を延ばしてみたいと思います。そんな新たな目標を胸に、琴平の町を後にしたのでした。

金刀比羅宮
・香川県仲多度郡琴平町892-1
・「琴電琴平駅」から徒歩10分。
・金刀比羅宮(外部リンク)

[ おまいり津々浦々 ]に戻る

[ おまいり津々浦々 ]に戻る